「大抵の場合、悪魔っつー種族は
    天使の仮面を被って現れるって相場が決まってンだ。」
             オーダイ・ブレンツェの言葉より

甘かった。
まさかこんなにこの洞窟が広かったとは・・・
はっきり言って、小さな町くらいの大きさは余裕であるぞ、コレ。
モンスターも強力ではないものの、こうも立て続けに出てこられると相当ツラい。
「ったく、ラチがあかねぇ・・・」
疲れ切った声なのが自分でもわかった。
「そうね、このままではダメだわ。」
そんな中、切り出したのはシャナだった。
「手分けして探しました方がいいわね。
このままじゃ他の班に追いつかれるのも時間の問題だわ。
階段を見つけたら大声で呼ぶ。それでいいわね。
ここは結構反響がすごいから、掛け声をかければ何とかなるし。」
またも強引に事を進めるシャナ。
こいつ、嫌いだ・・・
「しかし、それはいいでござるが、ランプは1つしかないでござるよ?」
ムサシの問いに、
「あんたたち、モンスターの気配を捉えられるんなら、ランプなんかなくたって平気でしょ。」
とか、無茶苦茶なことを言い出すシャナ。
「ふざけろよテメェっ!?」
「いくらなんでも無茶苦茶でござる!」
さすがにキレるオレとムサシ。
「そうだよ、私はライトの魔法が使えるから何とかなるけど、
リックスさん達は使えないんだから・・・」
スピカも援護してくれた。
「ブライアン!お前も何か言ってやれ!」
オレの言葉に、
「んー、ぼく、いくつかたいまつ持ってるから、何とかなると思うなー。」
と、笑顔でのたまうブライアン。
「最初っから出さんかいっ!!」
思わず全員でツッコむオレら。
つ、疲れるなぁ、このパーティ・・・ι
「と、とりあえず、分かれよう。
スピカとシャナは2人の方がいいかな。オレたちは1人で。
それぞれ四方を探せば見つかるだろ。」
たいまつに火を灯しながらオレは言う。
「うむ、リックスは北と北東、拙者は東と南東、
ブライアンは南と南西、スピカとシャナは西と北西を。
しらみつぶしに探せば見つかるはずでござる。」
と、ムサシ。
「そうだね〜、わかったよ〜。」
全然わかってなさそーに答えるブライアン。
「そうね、そうと決まったら早めに行くわよ。」
シャナはもう歩き出した。
「ま、待ってよ、シャナ〜!
み、みなさんも気をつけて下さいね。」
スピカもそう言いながらシャナの後を追う。
「では、拙者らも行くとしようか。」
ムサシの言葉にうなずき、オレたちは歩き出した。

「う〜ん、見つからねぇなぁ・・・」
みんなと別れて30分。
相変わらず階段のカケラすら見えない。
「・・・ん?宝箱だ。」
戦いの連続で疲れている中、薬草でも手に入ると嬉しいなぁ・・・
そんなことを考えながら宝箱に向かう。
「ガチャッ。」
宝箱を空けた瞬間!
「殺気!!」
オレは叫びながら振り向き、剣を向けるが、誰もいない。
・・・気のせいか?いや、確かに感じたんだけど・・・
やっぱ、疲れてんのかなぁ?
そうやって気を抜いた瞬間だった。
「ぱららいしすっ♪」
「うぎゃあああっ!?」
突然の声とともに身体がしびれた。動けないっ!
「な・・・なにもの・・・だ・・・」
倒れながらもオレは聞く。
体は動かないが、何とか喋ることはできた。
「えへリッくんまた逢えたね
現れたのはライム!
「な!なぜここにっ!?」
「うふふ愛し合う2人の運命だよっ
ウソだそんなの信じねぇ。
「えへっリッくん、だいじょおぶ?あたしが優しく治してあげるにぇ
ライムは天使の微笑みを浮かべつつ近寄ってくる。
「うふふ暗闇の中で愛し合う男女が2人・・・
これは何があってもおかしくナイわっ!!
それに、既成事実さえ作っちゃえばこっちのモンだよにぇ・・・えへっ
1人妙な妄想をしつつ、迫ってくるライム。
「おい待てコラ!誰がいつ愛し合ったっ!!
しかもお前男だろーがっ!!」
「えへへ今リッくん無防備だもんねっ
くちびる、奪っちゃおっかなぁ〜
なぁ〜んてっきゃはっ
んで、その後、あーんなことやこーんなことも・・・
いやぁ〜んあたしったらぁ〜
オレの悲痛な叫びをあっさり無視して妄想モードに入るライム。
・・・誰か助けてくれ。
「うふふっ
妄想が完結したらしく、怪しい笑みでこちらに向きつつライムが言う。
「ねぇ、リッくぅんちゅうしよ・・・?」
「嫌じゃああっ!!!!!」
即座に泣き叫びながら否定するオレ。
「ねぇ・・・だめぇ?」
外見だけはアイドル級の超絶美少女が言う。
・・・いや騙されんなオレ!中身は男だぞっ!!
そんな目で見つめられると思わず反射的にOKしてしまいそうになるが、
それを思い出し、踏み止まる。
この小説のジャンルを、BLモノにするわけにはいかないっ!!
「あう〜・・・
寂しそうにこちらを見つめるライム。
が、急に小悪魔的な笑顔になる。
「うん、そだよね・・・
じゃあ、やっぱり既成事実作っちゃうしかナイよね
あたしをこんな気持ちにしたセキニン、取って・・・
「取れるかぁぁぁぁっ!!」
「リッくぅんちうぅぅぅ〜
またもオレの叫びを無視してオレに迫るライム!
動け!オレの体よ、動けぇぇぇぇっ!!
しかし体は金縛りにあったまま!
「くっそぉぉぉぉ!!」
オレは死すら覚悟し、目をつぶった!
ああ、オレのファーストキス・・・
「がすっ」
何か気の抜けたような音がした。
唇には何の感触もない。
「・・・?」
恐る恐る、目を開ける。
「はっはっは、リックス。
モテる男はつらいでござるな。」
笑いながらそうオレに話しかけてきたその男は・・・
「ムサシ!?」
そこに立っていたのはムサシだった!
側には頭に大きなたんこぶを作ったライムが倒れている。
「階段を見つけて皆を呼ぼうとしたら、
お主の声が聞こえてきたものでな。
慌ててこちらに走ってきたのだ。
まぁ、間に合ってよかった、よかった。」
「サンキュー、ムサシ。
・・・ただ、その妙な笑みはやめてくれ。」
オレは泣きそうになりながらそう言った。
「はっはっは、冗談でござるよ。
っと、身体がしびれてるみたいでござるな。」
そう言って懐から丸薬を取り出す。
「これを飲め。拙者の国に伝わる麻痺治しの秘薬でござる。」
そう言ってオレの口に薬を入れる。
「○×△□%〆±※♪≧〒ゞ!!」
オレは自分でも何を言っているかわからないまま、
飛び上がって辺りを駆けずり回った。
・・・強烈な味だった。
例えて言うなら、「ミソスープの中にモツ煮込みとウメボシにピーナツバター、
蜂蜜、ナットウを混ぜてじゃがいもと焼き魚の和え物にぶっかけたものの味」
という表現が一番近い気がする。
いや、そんな恐ろしい物なんか食べたねーけど・・・
「ふむ。元気になったようでござるな。」
満足げにうんうん、とうなずくムサシ。
へーぜんと言うな。こっちは瀕死だぞ・・・
「さて、皆を呼んで、階段を降りるとするか。」
オレのことを全く気にしない様子でムサシが言う。
「ってか、階段はどこにあんだよ・・・?」
「あ。」
オレの言葉に、立ち尽くすムサシ。
あたりは相変わらず静寂が支配していた・・・


第二十五話も見てみる(工事中)
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