「いつまでも変わらぬもの。
    そんなものが本当にあると思っているのかい?」
             レイル・ボガード

「いやぁ、やったでござるなぁ。」
「努力はウソをつかねーもんだな、うん!」
先ほどとはうって変わって明るい表情で話すオレとムサシ。
・・・変わり身が早いとか言うな。
「早速だが諸君らには今日中に寮に入ってもらう。
入学式は明日だ!明後日からはすぐに授業に入るので心するように!」
「今日中!?早いなぁ・・・」
「やはり時間は少しでも無駄なく使いたいということなのであろう。
普通の学校と違い、入学前に休む時間などないとは・・・さすがでござるな。」
試験官の言葉に納得するオレら。
「ああ、そうだな。ダラダラ休んでるよーじゃ、この学園ではやっていけねぇってこと・・・」
「ちなみに、長期休みは夏までないので覚悟するように!」
「・・・あるんだ、夏休み。」
「・・・みたいでござるなι」
いまいち不安だが、と、とにかく憧れのジェイサード学園に入学できたことに変わりはない。
「さてと、すぐ宿に帰って早めに入寮しようか!」

オレたちが荷物を持ってジェイサード学園に戻ってきたのは、それから2時間後のことだった。
「すっかり遅くなってしまったでござるな。」
「ああ、あのセコセコヤロー、また襲ってくるなんてなぁ。」
そう、オレらの宿は町の反対側にあった上、
途中でオレを恨んだあのヤローが徒党を組んで襲ってきたのである。
もちろん、2人であっとゆー間に倒したのだが。
まぁ、その後色々事後処理が必要だったのだ。
「ったく、くだんねーことで逆恨みしやがって。よけーな時間使っちまったぜ。」
「・・・それはお主が全員をひっ捕らえて、木に括り付けて身動きできぬようにしたからなのでは・・・?」
「何のことかな?」
ムサシの抗議の視線をすばやくかわしてオレは言う。
ま、これでしばらくは悪さはできねーだろ。
そんなこんなでもう辺りは暗くなりかけていた。
「はい、あなたたちが最後ですよ。
ムサシ・アイハラさんとリックス・クルズバーンさんですね
寮の前には受付のお姉さんがいた。
「あなたたちが遅いから、もう相部屋しか残ってませんよ。
あなたたちは2人で1部屋ね。もう1つの部屋は荷物室になるから、注意してね
4256号室と4274号室、どっちがいいかしら?」
「・・・死にごろ号室と死になよ号室、どっちがいいでござるか?」
「・・・どっちでもいーや。」
オレは投げやりに答えた。
「じゃあ4256号室でおかしいわねぇ、毎年この2部屋が最後に残るのよ。」
いや、語呂が極端に嫌だからじゃないのか。
考えたら分かるだろ、オイ。
入寮だけでドッと疲れが増した気がしたのは、気のせいじゃねーよな・・・
部屋に荷物を置き、ムサシとラウンジに行く。
「まぁ、何かみんなちょっとズレてるよーな気がするけど、ここがあのジェイサード学園なんだよな。」
「うむ。・・・あまり現実を信じたくないがなぁ。」
2人でため息をこぼす。
「でも、施設は充実しているでござるよ。
かなりの『高級ほてる』並みでござる。」
「まぁな。それに、今日はあんまし人がいねーけど、普段は明るくて楽しそうな雰囲気だし。」
オレたちが話していると、「キィ」とドアが開いた。
現れたのは長い金の髪をなびかせた、僧侶風のとてつもなく美しい少女だった。
「あ、人がいたぁvv★やっほぉv★きゃあっv!?」
バランスを崩したのか、少女はいきなりコケる。
「お、おい!大丈夫か!?」
慌てて駆け寄るオレたち。
「おい、つかまれよ。」
そう言って手を差し出すと、急に抱きつかれた!
「ありがとぉvv★やさしいねvやさしい人、だぁーい好きっ
え?あ!?
頭がパニックになる。こ、こんな時どぉすればいいんだ!?
「それによく見るとかあいいし・・・一目惚れって、あるんだにぇ・・・
耳元で甘くささやく彼女。
「ちゅどーん!」
頭の中で何かが爆発した。
ななな、何だこの積極的なコはっ!?
心臓がドキドキ言っている。
オレ、実は恋愛の免疫、全然ねぇんだよな・・・
で、でもこの場にはムサシもいるしいっ!
「あたしねー、ライム=レストロイってゆーんだ
キミは名前何てゆーのぉ?」
「お、オレ!?お、お、お、オレの名前はリックス、リックス・クルズバーンだ。
えと、あ、まぁ、よろしく。」
「リックスくんかぁリッくんって呼んでもいいかにゃ?」
「え、ああ、べ、別に全然構わねぇさ、うん。」
すっげーしどろもどろだ。オレ。
そんなオレにムサシが近寄ってくる。
「リックス、気をつけるでござる。
彼、男でござるよ。」
「え?む、ムサシ、何を言ってんだ?そんなこと見れば分かるじゃねーか・・・え!?」
一瞬、ムサシが何を言っているのかわからなくなった。
「ライム=レストロイ。ヴァナリアース共和国の国立教会の1人息子でござる。
賢者としてのその実力よりも、アレな上に惚れっぽくて有名な人物でござる。」
小声でオレに伝えるムサシ。
「何でも、可愛い男が大好きらしいのだ。
拙者にはお主が可愛いとはとても思えんが・・・まぁ、がんばるでござる。」
オレの肩を叩きながら去って行くムサシ。
「・・・えっとー、男ってマジ?」
オレは引きつりながら未だオレに抱きついたままの『彼女』に向かって聞いた。
「・・・てへ
でもだいじょーび愛に性別は関係ナイもんっ愛してるっ
・・・助けてくれ、ムサシ。
オレの視線に気付いたか、途中からいきなりダッシュになるムサシ。
「あっ!ムサシっ!てめぇ逃げんなぁぁぁ!!」
オレは心の中で叫んでいた。
本当に・・・本当にこんな学園で大丈夫なのかよぉっ!?


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