「人なんてそれぞれみんな違うのに、
    完全に理解しようなんて傲慢なんだよ。」
             ナール・ディンゴウの言葉より

「ヒマだなぁ・・・」
「全くでござる。」
あっという間に卒業式は終わってしまった。
その後、教室に連れて行かれ、
「しばらく待っているように。」
そう言われて30分。
「それに・・・何かすごい視線を感じるし。」
「・・・ああ。」
「キュピーン★」
机に座り、目を輝かしてこっちを見ているライム。
「・・・あえて気にしないようにしよう。」
「・・・それがいいでござるよ。」
ポンとオレの肩に手を置くムサシ。
「えーっと、リックスさん、何か・・・あったんですか?」
側にいたスピカが尋ねる。
「・・・聞かないでくれ。」
涙を流しながら言うオレ。
「うんうん」と、横でムサシが同意する。
「ま、まぁ、これからよろしくお願いしますね。
リックスさんに、ムサシさん・・・でしたっけ?」
深く聞いてはいけない話だと思ったのか、話題を変えるスピカ。
とりあえず、しつこく聞かれなくてよかった。
凹むもんな、うん・・・
「よろしくでござるー★」
ムサシとスピカも打ち解けたようだ。
「けど・・・おっ、先生来たみたいだ。」
「ガラッ!」
扉が開き、入ってくる先生・・・あれ?
「どーも、みなさん初めまして。
ぼくがこの学年を担当することになりました、ウォーレン・マラーです。
一昨年ここを卒業したばかりなので、
ぼく自身教えるのにまだあまり慣れていないけども、
一生懸命がんばるので、よろしくお願いします!」
やっぱり、どっかで見た顔だと思った・・・
マラー先生がオレたちの担任かぁ。
そんなに話をしたりしたわけじゃないけど、
優しくていい先生だというのは分かっている。
そういう人が担任というのは、やはり嬉しい。
「あ、そうそう。
えーっと、早速だけど、君たちにはこれから、5人1組で
『メイルスパンの地下洞窟』に行ってもらいます。」
いきなり言い出すマラー先生。
『え?』
全員がそう声を上げた。
「うん、最初の課題はクラスのみんなと親睦を深めることも兼ねて、
5人1組の8チームで洞窟の地下4階にある『ジェイス・クリスタル』を取ってくること!」
なるほど。
先生は変幻の魔法でモンスターに姿を変え、見守る。
誰が何が得意で、どの程度の実力かを自分の目で判断でき、
対抗戦にすることで、5人のチームワークも育める。
初の授業には、宝探しゲームはもってこいかもしれない。
「選抜試験の結果を考慮して、もう組は作ってあるから、
名前を呼ばれたら前に出てきてね。」
マラー先生は、次々に名前を呼んで行く。
「・・・リックス・クルズバーンくん!」
「はい。」
「君は8班だよ。
諦めずに入試を突破したそのファイトで、がんばってね。」
優しくオレの肩をたたくマラー先生。
「あ、どーも。」
オレは先生に頭を下げ、メンバーを見る。
「おお、リックス!お主も同じ班でござるか!」
どこかで聞いた声。
「ムサシ!お前もか?奇遇だなぁ。」
「スピカもでござるよ。
いやぁ、なかなか楽しくなりそうでござるな。」
「ンなわけないでしょが。」
いきなりオレとムサシの会話に割り込んだのは、かなり気の強そうな女の子だった。
栗色の髪。ちょっとキツそうな目つき。
身軽そうな感じで、服装はシャツとズボン。
魔法使いという感じではなく、
さらに言うなら、戦士よりも武道家といった感じだ。
まさに、スピカとは好対照だ。
「あのね、この班は実力的にはいっっっちばん最低なのよ!?
他の班を見てからそーゆーこと、言ってくれる!?」
「何だとこの・・・」
「確かに、1班にはこの国最強とも言われる戦士、セファイド・ハートキー。
2班には実力、知性ともにトップクラスのランス・D・シコースキー。
3班には賢者としては超一流と言われるライム=レストロイ。
この3人を中心に、7班までは拙者も名前を聞いたことのある者が多いでござるな・・・」
文句を言うオレの口に手を当てて、ムサシが答える。
「そーよ。それに比べてこっちはどう!?
あんたら補欠合格3人組ってお荷物はいるし、マトモなのはあたしとスピカだけじゃない!」
「ま、まぁシャナ、落ち着いてよ。」
フォローしてくれたのはスピカだった。
「ケンカしても何にもならないよ。
それにホラ、自己紹介だって終わってないし・・・」
隣にいた褐色の肌をしたインディアンみたいな謎の大男も「こくこく」とうなずく。
「ったく、しゃーないわね。
あたしはシャナ・パーシバル。
自分で言うのも何だけど、シェリア共和国では結構有名よ。
スピード勝負だったら、誰にも負ける気はしないわ。」
シャナは答えた。
続いて、シャナに促されて、言い出しっぺのスピカが自己紹介をする。
「えと、私はスピカ・ティムナイトと言います・・・
一応、あの・・・ルーン公国の魔女の一族の血を引いています・・・
えっと・・・終わり・・・です・・・」
早々と紹介を終えるスピカ。
本当に、シャナと対照的だ。
「ぼくの番かな?
ぼくは、ブライアン・アスレイドだよ〜。」
スピカの隣りにいたインディアン風の、2m近い大男が間延びした声で言う。
「ジャングルからきたから、よくわからないこともあると思うけど〜、
がんばるからみんな、よろしくね〜。」
のほほんとした表情で言うブライアン。
見た感じ、「気は優しくて力持ち」と言ったところか。
こいつがどうやらシャナの言うところの「補欠合格3人組」の3人目らしい。
その後、ムサシとオレの自己紹介が終わり、いよいよ授業が始まる。
「さてと、自己紹介や交流はできたかな?
じゃあ、そろそろ説明するよ。
スタートは本学園の門、ゴールも同じ!」
マラー先生が言う。
「じゃあ、今から門まで行くよ。
みんなが集まった時点で始めるからね!」
そういうマラー先生の後ろについて、改めてメンバーを見た。
「いやぁ〜、楽しそうだねぇ〜。」
「ったく、何だってこんな班なのよ。」
・・・チームワークの面でやや不安な気がするが、
気のせい・・・ということにしておこう、うん。
こうして、今から始めての授業が始まる。


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